クラスカル・ウォリス検定とは
クラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)は、3群以上の独立した標本間で分布の位置(中央値)に有意差があるかを判定するノンパラメトリック検定です。データの正規分布を仮定せずに使えるため、一元配置分散分析(ANOVA)の前提(正規性・等分散性)を満たさないデータや、順序尺度のデータに適しています。各群のデータを統合してランクを付け、群ごとの順位合計から H 統計量を計算し、自由度 k-1(kは群数)のカイ二乗分布で p 値を判定します。
本ツールは、各群の数値をテキストで貼り付けるだけで、H 統計量・自由度・p 値・タイ補正・群別の中央値と平均ランク、さらに有意差があった場合の事後検定(Dunn 検定 + Bonferroni 補正)までを一括で算出します。データはサーバーに送信されず、ブラウザ内で完結します。
仮説
- 帰無仮説 H₀: すべての群の分布の位置(中央値)は等しい
- 対立仮説 H₁: 少なくとも 1 組の群間で分布の位置に差がある
判定ルール
| 結果 | 判定 | 意味 |
|---|---|---|
| p 値 ≥ α | 帰無仮説を棄却しない | 群間で中央値に有意差があるとは言えない |
| p 値 < α | 帰無仮説を棄却 | 少なくとも 1 組の群間で有意差がある |
標準では α = 0.05 を使います。医学・薬学などの厳格な領域では 0.01、探索的分析では 0.10 を使うこともあります。
計算ロジック
本ツールでは以下の式で計算しています。
- 全データを統合し、小さい順に順位(ランク)を付与(同順位の場合は平均ランク)
- 各群 i の順位合計 Ri を計算
- H = (12 / (N(N+1))) × Σ(Ri² / ni) − 3(N+1)
- 同順位がある場合のタイ補正: Hcorrected = H / (1 − Σ(t³ − t) / (N³ − N))(t は各タイグループのサイズ)
- p 値: 自由度 k − 1 のカイ二乗分布の上側確率
事後検定の Dunn 検定では、ペアごとに z 値を計算し、Bonferroni 補正(α / ペア数)と比較して個別ペアの有意差を判定します。
使う場面
- 3群以上の比較で 正規性が満たされないとき(Shapiro-Wilk 等で否定された場合)
- 順序尺度のデータ(評価点 1〜5、痛みスケール等)の比較
- サンプル数が小さい群を含む比較
- ANOVA の代替として、外れ値の影響を受けにくい検定がほしいとき
注意点
- 各群のサンプル数は 5 以上を推奨。それ未満では正確な分布表(または完全列挙)の利用が望ましい
- Kruskal-Wallis は「中央値の差」ではなく「分布の位置の差」を見るため、群間で形状が大きく異なる場合は中央値以外の要因も影響します
- 2群の比較なら Mann-Whitney の U 検定(Wilcoxon の順位和検定)の方が一般的です
出典・参考資料
- Kruskal, W. H., & Wallis, W. A. (1952). Use of ranks in one-criterion variance analysis. Journal of the American Statistical Association, 47(260), 583–621.
- Dunn, O. J. (1964). Multiple comparisons using rank sums. Technometrics, 6(3), 241–252.
- Conover, W. J. (1999). Practical Nonparametric Statistics (3rd ed.). Wiley.
- Press, W. H., et al. (2007). Numerical Recipes: The Art of Scientific Computing (3rd ed.). カイ二乗分布の上側確率は不完全ガンマ関数の連分数・級数展開で計算しています。