時効計算ツール(民法)

権利の種類ごとの期間と根拠条文

Step 1のボタンごとに、次の年数で完成日を計算します。起算日を2つ入力できる種類では2つの期間を別々に数え、先に来る日を「時効完成日」として表示します(民法第166条第1項は2つの期間を並べ、どちらかが過ぎれば消滅するとしています)。

ボタン主観的起算日から客観的起算日から根拠
一般債権5年10年民法第166条第1項第1号・第2号
不法行為3年(損害と加害者を知った時から)20年(不法行為の時から)民法第724条
生命・身体の侵害5年20年民法第167条・第724条の2
不当利得5年10年民法第166条第1項(一般債権と同じ)
賃金請求権支払期日から3年(入力欄は1つ)労働基準法第115条・附則第143条第3項
商事債権(旧法)5年(入力欄は1つ)改正前の商法第522条(現行商法では削除)

賃金請求権と商事債権(旧法)を選ぶと客観的起算日の欄が消え、Step 2の日付だけで計算します。この2つは「権利を行使することができる時から」数える期間なので、Step 2には知った日ではなく給料日や支払期日を入れます。生命・身体の侵害は、契約違反による請求(第167条で10年→20年)も不法行為による請求(第724条の2で3年→5年)も5年・20年になるため、1つのボタンにまとめています。

完成日は「入力した日の◯年後の同じ日付」になる理由

このツールは入力した日付に年数を足し、同じ月日を完成日として表示します。民法第140条は年で定めた期間の初日を算入しないとし、第143条第2項は「起算日に応当する日の前日に満了する」、第141条は「末日の終了をもって満了する」と定めています。入力日の翌日から数えると、満了日は入力日と同じ月日になり、その日の終わりに期間が過ぎます。ただし、次の点は条文どおりに処理していません。

  • 末日が休日の場合:第142条(末日が日曜日・祝日などで、その日に取引をしない慣習がある場合は翌日に満了)による繰り延べはしていません。

計算例:3つの入力とツールの表示

例1 一般債権(返済期日の貸金):返済期日が2021年6月30日で、その日から請求できると分かっていた場合は、両方の欄に2021年6月30日を入れます。主観的時効は2026年6月30日、客観的時効は2031年6月30日で、時効完成日は2026年6月30日です。2つの起算日が同じ日なら、必ず5年の方が先に来ます。

例2 同じ交通事故での物損と人身:事故日が2023年10月5日、加害者が分かった日が2023年12月20日の場合です。「不法行為」では2026年12月20日、「生命・身体の侵害」では2028年12月20日が時効完成日になります(20年の期間はどちらも2043年10月5日)。同じ事故でも、車の修理代とケガの損害では完成日が2年違います。

例3 客観的時効が先に来る不当利得:返還を求められるようになった日が2020年6月1日で、そのことを知ったのが2026年3月10日の場合、主観的時効は2031年3月10日、客観的時効は2030年6月1日で、時効完成日は2030年6月1日です。客観的起算日を空欄にすると2031年3月10日と表示され、9か月ほど遅い日付になります。

2020年3月以前に生じた債権は改正前の期間になる

ツールは日付によって改正前後の法律を切り替えず、一般債権・不当利得・生命・身体の侵害は2020年4月1日施行の改正民法の期間で計算します。一方、改正法の附則第10条第4項は「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による」と定めています。法務省の資料によると、改正前は「権利を行使することができる時から10年」を原則として、飲食料や売掛代金などの職業別の短期消滅時効(1〜3年)と、商行為によって生じた債権の商事時効(5年)がありました。

  • 2020年3月31日以前に生じた債権には、ツールの5年・10年が当てはまらない場合があります。「商事債権(旧法)」は改正前の商事時効5年の目安です。
  • 消費者ローンの過払い金について、法務省の資料は改正前を「判例上10年」、改正後を過払いを知った時から5年・取引終了時から10年としています。2020年3月以前からの取引は、どちらになるか専門家に確認が必要です。
  • 賃金は、2020年4月1日以後に支払期日が来た分から3年が適用され、それより前に支払期日が来た分は改正前の例によります(令和2年法律第13号附則第2条第2項)。

このツールで計算できないこと

  • 完成猶予と更新:裁判上の請求や支払督促の間は時効が完成せず、判決などで権利が確定するとそこから新たに進行します(第147条)。催告から6か月は完成せず(第150条)、権利の承認があるとそこから新たに進行します(第152条)。これらを入力する欄はありません。
  • 判決で確定した権利:確定判決などで確定した権利は、10年より短い期間の定めがあっても10年になります(第169条)。この期間のボタンはありません。
  • 援用の有無:時効は当事者が援用しなければ、裁判所はそれによって裁判をすることができません(第145条)。「時効完成済み」は期間が過ぎたことを示すだけで、権利が消えたかどうかまでは判定しません。
  • ボタンにない期間:退職手当(行使できる時から5年)や労働基準法の災害補償(2年)、債権・所有権以外の財産権(20年、第166条第2項)などは選べません。

結果は条文の年数を入力日に当てはめた目安です。起算日の認定、改正前後どちらの法律になるか、更新や完成猶予の有無で結論が変わるため、実際の判断は弁護士・司法書士に相談してください。

出典(確認した法令・資料)

よくある質問

表示される日は期間の最後の日で、期間はその日の終わりに満了します(民法第141条)。そのためツールは、当日は残り日数を「本日が最終日(本日の終了で完成)」と表示し、翌日から「時効完成済み」と表示します。途中で更新や完成猶予があれば、完成日そのものが変わります。
主観的起算日からの期間だけで完成日を出し、「客観的時効」と「先に到来する時効」の行は表示されません。上の例3のように、知った日が行使できるようになった日より遅い場合は、空欄のままだと実際より遅い完成日が出ます。
当てはまらない場合があります。2020年4月1日より前に生じた債権の時効期間は改正前の例によります(改正法附則第10条第4項)が、一般債権・不当利得のボタンは改正後の5年・10年で計算します。どの期間になるかは取引の時期と内容で決まるため、司法書士や弁護士に確認してください。
「賃金請求権」を選び、Step 2にその月の給料日(支払期日)を入れると、3年後の同じ日付が表示されます(労働基準法第115条・附則第143条第3項)。給料日は月ごとに違うので、1か月分ずつ入力します。退職手当(5年)は対象外です。
入力した日付は送信されず、計算はブラウザ内で完結します。結果欄の相談窓口リンクをクリックしたときだけ、選んだ権利の種類がアクセス解析に記録されます。